私は現在、オフィスワークの生産性向上の研究の一環として、これまでの先行研究の調査を進めています。最近気づいたのは、1990年代には「オフィスワークの生産性」や「時短」に関する論文や著書が複数出ているということです。
もともと「時短」は諸外国からの「日本人働きすぎ批判」から1980年代に始まったと言われています。しかし、その後の1990年代はバブル崩壊後の不況の中で苦戦を強いられる中で、パソコンなどのOA機器の普及を活用するなど、オフィスの生産性向上に取り組む必要がありました。
このように「時短」は30年にも及ぶ歴史を持ちながら、なぜ今だに大きな課題として私たちの前に立ちはだかっているのでしょうか?
その理由は大きく二つあると考えます。
ひとつは「パソコンの導入」などの機器導入は画期的な対策に見えますが、残念ながらそれだけではオフィス全体での生産性の向上には限界があるということです。
手作業がOA機器に置き換わった部分は確かに効率が飛躍的にアップしますが、その前後に残る手作業や、他のセクションとの連携関係など、業務全体の流れ、やり方の改善が必要です。
さらには「誰に、何を、どの程度」などの提供サービスの定義が不明確なままではムダな仕事が残ってしまいます。この問題は昨今のRPA導入に関しても同じと考えます。
ふたつ目の理由は、組織、さらには社会の風土、カルチャーが大きく影響している点です。
「時短」の旗を掲げながら、一方で「Aさんはいつも夜遅くまでがんばっててえらいね」などという上司がいたのでは、いつまで経っても状況は変わらないでしょう。
この点は、ようやく日本の社会も重い腰を上げて変わろうと努力している最中と感じます。
このように、全体を俯瞰した業務改善、そしてそれを勧める組織方針や組織風土、これらが一体となれば「働き方改革」はきっと成功するはずです。
30年後に「働き方改革って、昔もあったんだって」などとならないようにしたいですね。
佐貫総一郎・宮﨑敬 「現場からはじめる働き方改革」(金融財政事情研究会)
#働き方改革 #時短 #生産性
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