組織のトップが並んで深々と頭を下げて謝罪している写真を新聞でよく目にします。あまりの数の多さに、驚きや怒りを越えて、「またか・・・」とうんざりする気持ちにすらなります。
先日、私が参加するNPOリスクセンス研究会では「リスクセンス向上シンポジウム」を東京大学で開催しました。「不祥事・事故を無くしたい!簡便な予兆管理で対応を!」というサブタイトルで、この研究会で開発した組織と個人のリスクセンス診断を企業不祥事防止のために活用していただこうという狙いです。平日開催ということもあり、約80名の参加で会場の弥生講堂アネックスは満席となりました。
当日の報告および質疑応答を通じて、私はあらためて「不祥事」を大きく3つの種類に分けて考える必要があるのではないかと考えた次第です。
まずひとつは、製造業の品質偽装や金融機関の不正融資などにみられる企業不祥事です。これはまさに組織ぐるみというべきもので、トップの方針や姿勢に問題があるために、組織全体が道を誤るケースです。もう一つは、大規模なシステム障害や事務処理ミスなど、業務管理に大きな問題があるためにトラブルに至るケースです。さらにもう一つは、銀行職員の金銭着服や、コンビニエンスストアや飲食店などで不適切行為をSNSで公開するなどの、個人の不正や不始末です。
トップ自身が道を誤った場合には、ガバナンスと呼ばれる組織的なコントロールによる是正が期待されるところですが、実際には機能していないために不祥事に至っています。また、業務管理上の問題は、日常的には職員の努力によってさまざまな問題や矛盾がカバーされていることが多いものですが、大きなイベント負荷や外部からの攻撃が加わった場合にトラブルとなります。そして、個人の不始末については、最近ではアルバイトなどの帰属意識の薄い働き手が増えていることから管理がますます難しくなっています。
それぞれ悩ましい問題ですが、相対的には2番目の業務管理上の問題がもっとも解決しやすいと考えます。もちろん組織としての取り組み姿勢がなければ不可能ですが、業務プロセスの改善や投資により、具体的な改善が望めます。これまで研究会の中で、私たち「オフィス力(りょく)プロジェクト」としては主にこのテーマに取り組んできました。今後は、他の二つの難題にも立ち向かっていく必要があると感じた次第です。
(写真は、このシンポジウムで報告する筆者)
(リスクセンス向上シンポジウム)
#不祥事 #組織マネジメント #リスクセンス
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