私はギターを弾くことが好きで、エレキギータを中心に40年以上続けています。世間では、子育てと仕事で長年中断したのち、50代で復活するパターンをよく耳にしますが、私は一時も休まず弾き続けています。ジャンルとしては、20代に始めた時からずっとブルースを、しかもブルースのみを弾いていましたが、ここ数年ジャズの修行を始め、ブルースは蓋をしてしまってある状態です。ブルースは長年仕込んだ甲斐があり、もう10年以上前になりますが、メンフィスの「ロイヤルスタジオ」という黒人音楽の殿堂で、地元のブラックミュージシャンとレコーディングをした実績もあります。一方、ジャズの世界に引っ越してからは、もう「一から出直し」状態で、妻からも「いったい今まで何やってたの?」と言われるくらいたどたどしい演奏が続いてきました。
ようやく最近、ジャズセッションでのレパートリーも10曲を超え、また他の人のバックで知らない曲をいきなり一緒に演奏しても大抵は着いていけるようになりました。
・・・という話をすると、「え?ブルースとジャズって同じじゃないの?」とか、「え、ブルースとジャズってどう違うの?」とよく聞かれます。すると、これまた、長年やってきたにもかかわらす、「う~ん、似てるんですけどずいぶん違うんですよね~」みたいに、あいまいな受け答えしかできない自分が情けなくなります。「ブルースはコード3つでできるんですけど、ジャズは100個くらいコード知らないとできないんですよ」と答えても、普通の方はピンとこないと反省しています。少し長い説明を許していただけるときは、「ブルースは米国南部の綿花畑で生まれてブラックコミュニティの中で発達した音楽で、ジャズはニューオーリンズの黒人が南北戦争で放出された楽器を持って始めた音楽で、白人社会に溶け込んで広まったもの」など、本で読んだ知識を説明しますが、これでも聞いた方はまだピンとこないだろうな、と困っています。
ひとつ体験に基づいてお話できるのが「ブルースセッションとジャズセッションの違い」です。あくまで私が複数の日本のライブハウスで体験した事実のみに基づいていますが、まず、ありがたいことにジャズセッションは禁煙の場合が多いですが、ブルースセッションはどこもタバコの煙ムンムンでした。
二つ目は、ブルースセッションでは自分の番が回ってくるまで、お酒をガンガン飲みながらバカ話をして騒いで楽しんでいましたが、ジャズセッションに行くと、みなさん楽譜を見ながらおとなしく待っています。
さらに三つ目は、ブルースセッションでは、アドリブを回す順番は自由、目配せで適当にやっていましたが、ジャズセッションでは、「まずテーマを弾いた楽器、次に管楽器、それからピアノかギター、そしてベースソロの次に4バース(4小節ずつのアドリブ)でドラムにも回す」のような暗黙の了解があります。最初私はこれを知らずに適当に順番を回していたら、ヒンシュク者でした。
そして四つ目は、ブルースセッションでは他の人の演奏風景も遠慮なく写真に撮ってSNSにアップしても平気でしたが、ジャズセッションでは「原則ホストバンドメンバー以外は本人の承諾なくしての掲載は遠慮する」という暗黙の掟があるようです。むしろ一般的にはこれが常識的ですが、なぜブルースセッションの場合は気にしないかというと、一旦ステージに上がったらショーマンシップ、というか、「テレビでもなんでもドンドン映してくれ」という出たがり根性丸出しの感覚でした。
以上は、あくまで私の体験に基づく偏見です。別にどちらが良いとか、悪いとか言うつもりは全くありません。ただ、面白いことにいろいろ違いがあり、最初はかなり戸惑いました。しかし、何事も「郷に入れば郷に従え」と言われるので、私はひたすらジャズセッションのお作法に馴染むよう努力し、最近ようやく慣れて居心地良く過ごせるようになりました。
また来週、ジャズセッションに行くのが楽しみです!
(写真は国分寺「M's」でのセッション風景。ギターを弾いているのが筆者。)
#ジャズ #ブルース #セッション
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岡田 康 (日曜日, 09 2月 2020 21:14)
ブルースとジャズの違いって、あまり考えたことなかったですが、ジャズに比べてブルースはグッとカジュアルな感じですね。クラシックとポピュラーのようで、意外にジャズって、襟を正して聴くのかな、でもどちらも素晴らしい。音楽を楽しめばよい