デジタル庁が11月24日に報道陣宛にメールの一斉送信を行った際、bccを使うべきところ誤ってccを使ったために400件のメールアドレス情報を誤送信したとのニュースが流れました。
ネットの記事には「凡ミス」「これではアナログ庁だ」から、「デジタル庁解体論」に至るまでの批判が見られました。
DX時代だからこそヒューマンエラー対策が重要
今回のケースは、デジタル庁の今後の行方が不透明状況の中で、メールの誤送信という単純かつ重大なミスが国民の不信感を刺激したように見えます。「bccとすべきことろ、誤ってcc」は決して珍しいことではなく、現に私が長年勤務していた信託銀行でも同様のミスが複数回があり、社内のミス防止重点項目に掲げられていました。したがって、「みんなが注意していることを、デジタル庁が守れないのはけしからん」というのが国民感情だとも言えます。
それだけに、今回の出来事を「デジタル庁バッシング」の材料とするのではなく、自分事としてとらえ直す必要があると考えます。最も重要なポイントは、「デジタル化すればミスがなくなる」というのは神話、願望に過ぎないということです。
デジタル以前の時代であれば、400件の相手先に郵便で情報を送る必要があり、その宛先住所が記載された一覧表を全てに同封するなどというミスは起きようがありませんでした。しかし、メールという大変便利なツールが普及した結果、1回のクリックで400件の誤送が発生する世の中になったのです。ですから、デジタルを活用する場合には、「一瞬にして大量のミスが発生する」ことを前提とした仕事の組み立て、マネジメントが必要となるわけです。
デジタル庁に欠けているものは何か?
これまでモノづくりの仕事では、工場での人間と機械の分業と協力の関係を「マン・マシンシステム」という一体のシステムとして扱い、安全性、効率性などの観点から研究が進められてきました。
DX時代は人間とデジタル、AIとの協業の在り方がテーマとなります。デジタルもあくで道具ですから、人間の指示に基づいて機能します。そして、人間にしかできない仕事がある一方で、人間はヒューマンエラーを起こす宿命を持っています。この関係を前提として人間とデジタルの協業関係を組み立てる必要があります。その際に、人間が不得意な部分をデジタルで補う関係がつくれれば、効果を発揮することができるはずです。
宛名のcc欄に大量のアドレスが記載されたメールは第三者のチェックがなければ発信できないなど、仕掛けで打ち取る方法はすでに利用されています。今回のデジタル庁のミスは、「初歩的」であるかどうかではなく、このような仕掛けを率先して導入、活用していなかった点が問題とされるべきではないでしょうか。
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