事務ミス、トラブルの影響はそれだけですか?
仕事のミスや業務上のトラブルでお客さまにご迷惑をおかけすると、信頼を失い、顧客評価が下がる原因となります。
でも、それだけでは済まないことに注意を向ける必要があります。
ミスやトラブルの発生に伴い、本来は前向きのセールスに使えるチャンスを失ったり、社内的はお詫びや修復のために残業などのコストがかかり、さらにこれらが複合して働く人のモチベーションの低下につなるなどの影響もあるからです。
ここではミスやトラブルを起こさないための具体的な取り組み方と、それを通じて前向きな組織、チームを作るマネジメントポイントをご説明します。
株式会社オフィスソリューション 代表取締役 宮﨑 敬
三菱UFJ信託銀行で事務マネジメントを長年にわたり経験し、定年退職翌日に現在の会社を創業。複数の学会に所属しながら研究活動を続け、「実務経験と研究成果を裏付けに実務と経営に貢献する」という信条のもと、オフィスワークの品質・生産性向上のコンサルタント業務をオンライン研修を中心に展開中。
目次
- ヒューマンエラーが起きる仕組みを理解することからスタート
- 問題を確実に解決するための3つのステップ
- 失敗から学ぶ姿勢でミスを防ぎ、前向きな職場をつくる
- まとめ:使命と宿命のギャップをマネジメントで解決
ヒューマンエラーが起きる仕組みを理解することからスタート!
仕事のミスは人間の「失念」「見落とし」「思い込み」などの行動(または不作為)が原因で起きます。
人間には能力的な限界や特有の習性があり、外部の環境がそれらに影響を与えることによりエラーが起きます。
例えば、新商品発売やキャンペーンなどに伴い業務の量が急に増えた場合は、疲労に伴い注意力が低下する(能力的限界)、所定の手順を省略して締め切りに間に合わせようとする(習性)などにより、エラーが起きやすい状態となります。
- エラーが起きる原因を取り除く
- エラーが起きた時にすぐ気づける仕組みをつくる
- エラーが起きても影響を最小限に抑える仕組みをつくる
したがって、オフィスワークにおいては、エラーを誘発する外部環境の管理と改善が重要なポイントとなります。
この分析により、ミスにつながる影響を与えている外部環境を特定して具体的に改善します。
例えば、業務量急増の場合には、作業の途中で休憩時間を設定する、応援体制を組むなど、注意力を損ねる負荷を軽減する工夫を行います。
また、チェックリストの使用、作業手順など、所定のルールを逸脱しないよう、朝礼などで確認しあうことも必要です。
問題を確実に解決するための3つのステップ
このようにヒューマンエラーが起きないよう努力することがまず必要ですが、実務の中ではいろいろな問題が生じるものです。
ミスやトラブルが発生した場合に思いついた対策を拙速に実行するのではなく、問題の特定、原因分析、対策検討という手順を踏んで進める必要があります。
まじめな人ほどすぐに「打ち手」に飛びつきたくなるものですが、問題を生じさせた原因を特定できていないと有効な対策はの望めないからです。
例えば、同じようなミスが続いた場合に「ミスは許されない!と朝礼で注意喚」という例を見かけますが、果たして「ミスしてもOK」と思って仕事をしている人はいるのでしょうか?
また、「担当者の作業後、必ず2人以上がチェックする」と号令がかかることがありますが、これは効率が悪化するばかりでなく、「自分以外にもチェックしている人がいる」という安心感が気の緩みにつながり、結局チェックの効果が発揮されないという弊害も起きかねません。
したがって、問題解決の3つのステップの中でも原因分析が特に重要です。
原因分析の進め方としては、「なぜ?」を3~5回程度繰り返して掘り下げると同時に、「検討洩れ」を防ぐために視野を広げて考える必要があります。
検討洩れを防ぐためには「人間」「ツール」「環境・運営」の3つの切り口を活用すると効果的です。
この3つは「職場(オフィス、ワークプレイス)」を構成する基本要素だからです。
例えば、「人間の育成に問題はないか?」「使っている帳票やワークシートは使いやすい状態か?」「作業環境や情報連絡ルールに問題はないか?」というような発想で分析を進めます。
原因が明らかになったら、いよいよ対策の検討です。
効果的な手順を策定するためには、複数の案を検討した上で必要なものを絞り込み、優先順を決めて実行します。
対策検討の際にも「検討洩れ」を防ぎたいので、ここではさきほどの3つの切り口から発展させた「9つのマトリックス」を活用します。
このマトリックスを使うことで網羅的な検討が可能になりますが、実務での取り組みのためには優先度の高いものを絞り込んだ上で、実行計画を立てます。
優先順の検討は、それぞれの対策案について「効果(Q)」「費用(C)」「時間(D)」の基準で評価して行います。
上記の評価結果に基づき、優先度の高いものを複数(3つ程度)組み合わせて実行するのが効果的です。
失敗から学ぶ姿勢でミスを防ぎ、前向きな職場をつくる
これらの取り組みを効果的に進めるためには「失敗から学ぶ」という姿勢が欠かせません。
「たまたまその人がヒューマンエラーを体験した」と考え、当事者の責任追及をするのではなく、問題解決の手順に沿った取り組みをチーム全員が協力し関係者と連携しながら前向きに進めていくことが求められます。
他のセクション、さらに他社や他の業種で起きている事故事例から何を学べるか、にもチャレンジします。
例えば、電車などの点検作業で「最後のボルト締めの際の1本の締め忘れが事故につながった」という報道を見た際、「難しい作業の最後に行う簡単な作業は要注意!」という応用ができたら素晴らしいですね。
このようにみんなで知恵を出し合って前向きに取り組むムードが、再発防止、さらには未然防止に効果を発揮します。
まとめ:使命と宿命のギャップをマネジメントで解決
「仕事は絶対に間違えてはいけない」という使命と「ヒューマンエラーはゼロにできない」という宿命のギャップを解決するのがマネジメントです。
ヒューマンエラーが起きる仕組みを正しく理解し、エラーが起きた原因を徹底的に分析した上で効果的な対策を実行することにより、再発防止、さらには未然防止が可能になります。
そしてこのような取り組みを通じて失敗から学ぶ前向きな組織風土をつり、その中で明日を担う人材を人財へと育てることも可能になります。
「事務ミス防止」のポイントを3分で学べる動画
執筆者プロフィール
株式会社オフィスソリューション 代表取締役 宮﨑敬 (みやざきたかし)
【経歴】
1979年 早稲田大学法学部卒業、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社
証券代行、外国証券管理等の事務サービス業務領域で現場マネジメントを経験
2004年〜 グループ内関連会社4社において常務取締役を歴任
事務マネジメントに関する経験と研究成果を「事務学」として体系化
社内外での講演、セミナー、業務改善プロジェクト指導の実績多数
失敗学会(特定非営利活動法人)およびリスクセンス研究会(同)の活動を通じて、事故防止、健全な組織づくり等を研究
2011年~ グループ内研修会社にて研修開発・講師を5年間担当し好評を得る
2016年 同グループを定年退職し、株式会社オフィスソリューションを設立
【所属学会・研究活動】
公益社団法人 日本経営工学会 http://www.jimanet.jp/
一般社団法人 日本品質管理学会 https://www.jsqc.org/index.php
一般社団法人 日本システムデザイン学会 https://www.sdsj.sci.waseda.ac.jp/
早稲田大学理工学術院創造理工学研究科修士課程(経営工学)2011年修了
株式会社オフィスソリューションがお手伝いします!
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4.オフィスワーク人材育成コース
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詳細についてご相談に応じますのでお気軽にお問い合わせください。
また、個人参加コースもありますので、自己啓発としてご活用ください。
オフィスマイルメソッドとは?
これまで、私がこれまでが著書、講演、セミナー等でお伝えしてきた事務などのオフィスワークマネジメントに必要な考え方・知識、スキルとツール、行動と実践を「オフィスマイルメソッド」として体系化しました(2023年完成)。
原理を学んだ上で、あらゆる業務で今日から実践できるポイントを平易に解説しています。
現在、以下の8つのコンテンツのスライド教材としてまとめ、上記のオンライン研修等を通じてご提供しています。
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